筋萎縮性側索硬化症(ALS)でも未来がある

患者様・ご家族・および支援チームの皆様へ

 この動画(下記)は、湘南真田クリニックが訪問診療を実施している松山 博氏(70歳)が、平成29年7月22日(土)に厚木市(アミュー厚木)で行った講演「ALSでも未来がある」を、ホームページ上で自由に見ることが出来るようにしたものです。この講演には、湘南メディケアグループ(SMC)の職員も参加させていただき、大変感動しました。もちろん、個人情報については、ご本人・ご家族の了解を得ています。どうか、松山さんの講演から貴重な学びを得ていただきたいと心から願っています。

 湘南真田クリニックは、医師5名(常勤3名、非常勤2名)、看護師4名、在宅連携室職員4名、医事部門の事務職員2〜5名により、総合診療(内科・小児科)および形成外科の外来診療を行うとともに、月次450〜500件の在宅訪問診療を実施しています。この訪問診療のうち筋萎縮性側索硬化症(ALSと略します)の患者様は5名でした。ALSの多くは人工呼吸管理、胃瘻による栄養管理を必要とする進行性の難病です。体は動かず、嚥下は困難ですが、意識は障害されませんので、症状の進行にともなって葛藤と格闘を繰り返す日々が続きます。本人が意思を強く持つだけでなく、ご家族の支えが不可欠となります。また、訪問診療、訪問看護、訪問薬剤、訪問リハビリ、居宅介護支援、訪問介護、医療機器メーカー、介護用品・福祉用具メーカー等の支援チームによるサポートが欠かせません。

 演者 松山 博氏について簡単に触れさせていただきます。発症は平成21年3月。腕が上がらないなどの症状が出現し、同年9月にALSと診断されました。小学校の教諭であり、現役中に発症しました。平成25年8月、誤嚥性肺炎で入院し、9月に胃瘻造設術を受けるとともに、退院後、10月8日から当院による訪問診療を開始しました(主治医は石井伸朗医師)。平成27年6月、喉頭閉鎖を伴う気管切開術を受け、人工呼吸が開始されました。この時、喉頭閉鎖を伴う気管切開術を採用したことが、誤嚥防止に有用なだけでなく、胃瘻経管栄養から経口摂取に切り替えることが出来るという画期的な道筋をつけることになりました。

 その後、平成27年11月から平成28年11月までの1年間、レスパイト入院を4回行い、車椅子乗車・散策、乗用車移動の訓練を積み重ね、ついに、平成29年1月29日、JR東日本の東海道線に乗車して平塚駅〜有楽町駅を往復。東京国際フォーラムで開催された「コミュニケーション支援シンポジウム」に参加できました。そのため、急変時のために、事前にBVM換気の訓練をご家族に行っていただきました。救急医療のスキルが役に立った瞬間でした。そして、平成29年7月22日、厚木市で講演「ALSでも未来がある」を行いました。10月12日には、平塚市保健センターで「コミュニケーション」をテーマにした口演が行われ、平成30年1月11日には平成29年度保険福祉事務所保険福祉サービス連携調整会議「難病対策地域協議会」に参加。平成30年2月22日には、ALSの仲間に会うために埼玉に出向かれ、6月17日には名古屋市で開催予定の「世界ALSデー」に参加する予定です。

 このように、松山 博氏は、ご家族の支援と多職種・多事業所の協働・連携に支えられているとはいえ、何よりもご本人の生きようとする強い意思に支えられており、逆に多くの方々に生きる勇気に与えています。平成29年1月、JR東日本の東海道線に乗車し東京国際フォーラムのシンポジウムに参加した松山 博氏は、事後の感想として、「生き方の目指す方向が見えた」「ALSは、寝たきりではなく、生活者として生きていける病気」であるとの認識に達したそうです。

 松山 博氏の講演は多くの示唆に富んでいます。筋萎縮性側索硬化症(ALS)を知るだけでなく、生きる智恵と勇気を与えてくれると思います。松山 博氏を支えてきた支援チームは、これからも、いつまでも寄り添っていきたいと願っています。

平成30年5月1日
医療法人救友会 理事長
山本 五十年

講演 "ALSでも未来がある"

講演 "ALSでも未来がある"(1)

講演 "ALSでも未来がある"(2)

講演 "ALSでも未来がある"(3)